なぜいま東欧諸国でコロナ死者が急増しているのか。「インフォデミック」の原因
「インフォデミック」とは―
WHO(世界保健機関)により使われ始めた造語で、正しい情報と出所不明の不確かな情報が大量に混ざり合い、信頼できる情報や知識が必要な時に見つけにくくなってしまう状態を指します。
特定のトピックに関する情報量が急激に増大し、短期間で指数関数的な増加を見せることが特徴です。
この現象自体は新しいものではありませんが、インターネットとSNSによって情報の拡散力が飛躍的に高まっている現代において、その規模と速度は従来の比ではなくなっており
WHOも科学的に根拠のない情報を信じないよう、公式サイトで注意を呼びかけています。
SNSが浸透したことで、過去より情報が拡散しやすくなっています。
1日に受け取る情報量などを元に算出した情報拡散力は、2003年のSARS流行時と比べて68倍になりました。
2月末、トイレットペーパーの買い占めが起きたのもSNSのデマ投稿が発端でした。
怖いのは、デマ投稿よりもデマを否定した情報の方が拡散し、結果的にトイレットペーパーの買い占めを招いた可能性がある、という指摘です。
そしてこの秋、日本ではワクチン接種完了率75%というおかげか先日1年3カ月ぶりに死者ゼロという結果が出ています。(引用元:Our World in Data)
しかし、東ヨーロッパにおいては逆に新型コロナによる死者が増加しています。
特に深刻なのがジョージア・ブルガリア・ルーマニアなどの東ヨーロッパで、確認できる最新のデータ(2021年11月16日)では、新型コロナによる死者が過去最悪レベルになっています。
主に東欧諸国における新型コロナによる死者数(人口100万人あたり・2021年11月16日まで)Our World in Dataより
イギリスやドイツなど西ヨーロッパ各国でも感染拡大が起きているのですが、死者の数はそこまで増えていません。この違いの背景として指摘されるのが、ワクチンの接種率です。
主に東欧諸国における新型コロナワクチン接種率(対人口比・11月16日まで)Our World in Dataより
Our World in Dataで確認できる最新のデータ(11月16日)で比較すると、少なくとも1回新型コロナワクチンを接種した人の割合は、EU平均の70%と比べ、ジョージアでは28%、にすぎません。
EU加盟国であれば、ワクチンはEUが調達して分配する枠組みがあり、ブルガリアやジョージアにも十分な量が割り当てられたため供給が不十分だったわけではなさそうです。
しかし両国ではワクチン接種に対して不安やためらいを持つ人が多く、接種が進まなかったとされています。
SNSを情報源とする人ほど、ワクチンへのためらいを持つ人が多い。
ではなぜ、両国でワクチン接種をためらう人が多かったのでしょうか。
WHOによれば、今回、東ヨーロッパ各国でワクチンの接種が広がらなかった背景に、SNSにおいてワクチンを不安視する情報や陰謀論が拡散したことが一つの要因として指摘されています。
対策のポイントは「信頼」
EU機関であるEurofundの報告書でも、「信頼」がポイントとされています。
実はワクチンへの接種をためらう人には、SNSを主な情報源とすることの他に、「政府や医療制度、そして伝統的メディアへの信頼度が低い」ことが共通していました。
EU諸国において、ワクチンの接種をためらう人とそうでない人を比較すると、政府、医療制度、伝統的なメディアへの信頼度が低いことが分かりました。
一方、SNSに対する信頼度は、ワクチンをためらう人とそうでない人でそれほど変わりませんでした。
ここから推測できるのは、政府や医療機関、さらには伝統的メディアが信頼するに足る存在だと認められているかどうかが、SNSにおけるインフォデミックの広がりに対しても影響を与えているということです。
日本では新型コロナワクチン接種の開始当初、接種率の向上が危ぶまれた時期もありましたが、一貫して接種率は向上し続け、最新のデータでは先進国でもトップレベルの接種率を達成しています。
政府や自治体、そして多くの医療者によって接種を勧めるメッセージが一貫して発せられ、それがある程度の信頼感を持って受け入れられた結果と言えるかもしれません。
公衆衛生において、メディア(伝統的メディア及びSNS)による情報の拡散は国民の行動に大きな変化を与えます。一方でそれだけが国民の行動を決めるわけではなく、その時々における政府や医療関係者の姿勢にも影響されうるという点は、軽視されるべきではないと思います。
しかしながら、3回目のワクチン接種が確定し、2回目の接種が完了しても不安を拭いきれない、本当に抗体ができているのか?など不安に駆られている方は少なくないのではないでしょうか。
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