新型コロナウイルス対策における漢方治療
ようやく日本でも新型コロナウイルス感染症が収束に向かって来ているように感じますが、いまだ治療薬もワクチンもないことは事実であり、今冬には第6波が起こるのではないかと予想されています。
一方、感染が早期に広まった中国では、治療に漢方薬を取り入れた例が報告され、注目されています。漢方薬自体には、細菌やウイルスを殺す強い作用はありません。
しかしながら、ウイルスから身体を守る防御機能を高めることができ、人間が本来持っている自然治癒力を高めることで、治る力を最大限に引き出すことができると期待されています。
漢方薬の歴史は古く、そもそも漢方薬は感染症の大流行を抑えるために生み出された薬とも言われております。
【先ずは身体を守る防御機能を高めるために】
身体の防御機能を高めるためには、日々の養生がとても大切です。適度な運動・正しい食生活・十分な休養・睡眠がその基本となります。
【漢方により改善する可能性がある代表的なもの】
■循環障害を改善する
新型コロナウイルスでは、血栓症との関連も数多く報告されています。東洋医学では、血液の流れが滞って巡りが悪く、血栓ができやすい循環障害の状態を瘀血(おけつ)」と呼びます。
■水分循環を改善する
中国で使用された漢方薬の中に、水分の循環を改善する生薬が含まれています。肺で発生する分泌液を痰や尿として排出させるためだと考えられています。
【漢方による治療改善法】
※補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
胃腸を丈夫にして体力を回復させ、元気を取り戻すのを助ける漢方薬です。免疫力を高める働きを持ち、過剰な炎症(サイトカインストーム)の抑制もできると期待されています。この作用を持つと期待されている漢方薬のグループを「補剤」とよび、
十全大補湯や人参養栄湯もこのグループに属する漢方薬です。
※桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
「瘀血(おけつ)」の状態を改善する代表的な漢方薬です。血栓症になるリスクが高い場合は、血液の循環を改善しておくのが良いかもしれません。また、「冷え」は防御機能を衰えさせる原因として、漢方では嫌われていますが、桂枝茯苓丸は「冷え」を改善する効果があります。
※五苓散(ゴレイサン)・柴苓湯(サイレイトウ)
水分循環を改善し、無駄な水分やむくみを取り除く生薬から構成されています。さらに炎症をともなう場合には、五苓散に小柴胡湯を合わせた柴苓湯で炎症を抑えます。
■感染したかも?と思ったら
発熱を認めた時点では、麻黄湯や葛根湯の服用がおすすめです。麻黄湯や葛根湯は風邪の引き始めに使われる漢方薬で有名ですが、身体を温めウイルスの働きを弱める効果があると言われています。ウイルスの増殖を抑える作用やサイトカインストームを抑える作用の報告もあります。
もちろん、発熱を認めたときには、既に肺炎が始まっていることもありますので、漢方薬だけでの治癒を期待せず、かならず新型コロナウイルス対応を行っている病院を受診して適切な治療を受けることが大切です。
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